取引先やお客様から届くお歳暮を、会社として受け取らないケースが増えています。
背景には、公平性やコンプライアンスを重視するビジネス環境の変化がありますが、とはいえ贈ってくださった相手の気持ちを無下にするわけにはいきません。
そこで本記事では、会社としてお歳暮をお断りする際の基本マナーから、メール・電話での言い方、さらには実際にそのまま使えるフルバージョンの例文までまとめました。
「断りつつも感謝を伝える」ための表現を多数用意しているので、状況に応じてアレンジしながらご活用いただけます。
2025年の最新ビジネス事情を踏まえた対応方法を押さえて、スマートに信頼を守る断り方を身につけましょう。
会社でお歳暮をお断りする必要性とは
ここでは、なぜ会社としてお歳暮をお断りする必要があるのかを整理してみましょう。
単に「受け取らないほうがよい」という漠然とした理由ではなく、取引先との公平性や組織としての姿勢が大きく関わっています。
取引先との公平性を守る理由
特定の取引先からのみお歳暮を受け取ると、他社とのバランスを欠き、不公平に見られる可能性があります。
とくに長期的な関係を築きたい場合、公正さは大切な基盤になります。
「どの取引先にも同じルールで対応している」と示すことが、信頼維持につながるのです。
コンプライアンス意識と時代背景
最近は会社全体で透明性や公正性を重視する動きが強まっています。
曖昧な判断や担当者ごとの対応の違いは誤解を生みやすいため、明確に「お断り」とルール化する会社が増えています。
とくに社外からの目が厳しい業界では、この姿勢が信頼の証明にもなります。
社員間トラブル防止の観点
お歳暮を受け取った際、「誰が管理するのか」「どう分配するのか」という社内の小さな不満が生じがちです。
こうした些細な問題が積み重なると、チームワークに影響することもあります。
最初から会社全体で辞退を徹底すれば、社員同士の摩擦を避けることができます。
お断りの理由 | 具体的なメリット |
---|---|
取引先との公平性 | 「どの会社にも同じ対応」と示せる |
コンプライアンスの強化 | 外部からの信頼を高められる |
社員間トラブルの防止 | 分配の不公平感や不満を未然に防ぐ |
お歳暮を断るときに大切なマナー
お歳暮をお断りする際は、単に「受け取れません」と言うだけでは不十分です。
相手の気持ちを尊重しながら、丁寧に伝えることが信頼関係を守るポイントになります。
まず感謝の気持ちを伝える
受け取らない場合でも、相手がお歳暮を用意してくれた気持ちには感謝を示す必要があります。
「ありがたいお心遣いをいただきました」という言葉を最初に添えるだけで、印象がぐっと柔らかくなります。
感謝 → お断り → 今後も良い関係をお願いするという流れが基本です。
会社規定を理由にして角を立てない
「個人の判断」ではなく「会社全体の方針」として伝えると、相手も納得しやすくなります。
「私個人は受け取りたいのですが…」といった表現は、かえって誤解を生むので避けた方がよいでしょう。
ルールとしての辞退であることを伝えることで、断りの理由が明確になります。
関係を損なわない柔らかな表現の工夫
ストレートに「受け取れません」と伝えるよりも、柔らかい表現を選ぶことが大切です。
たとえば「お気持ちだけありがたく頂戴いたします」といった表現は、相手を立てつつ辞退する言い方です。
「せっかくですが」や「心苦しいのですが」といった前置きを入れるのも効果的です。
マナーのポイント | 良い例 | 避けたい例 |
---|---|---|
感謝を伝える | 「ありがたいお心遣いを賜り…」 | 「受け取れません」だけで終わる |
会社規定を理由にする | 「弊社の方針により…」 | 「私は不要ですので」 |
柔らかい表現 | 「お気持ちだけ頂戴いたします」 | 「受け取るわけにはいきません」 |
会社で使えるお歳暮お断り例文集【フルバージョン付き】
ここでは、実際にそのまま使えるお断り文例をまとめました。
短い文から、冒頭から結びまで整ったフルバージョンまでご紹介するので、状況に合わせて調整してみてください。
基本パターン(短文)
まずは最もシンプルなお断り表現です。
「このたびはご丁寧なお心遣いをいただき、誠にありがとうございます。恐縮ながら弊社の方針により、贈答品は一律でご辞退申し上げております。お気持ちだけありがたく頂戴いたします。」
取引先から毎年届く場合の例文
繰り返し贈ってくださるお取引先には、少し踏み込んだ表現がよいでしょう。
「毎年格別なお心遣いを賜り、厚く御礼申し上げます。大変心苦しいのですが、弊社では公正な取引の観点からすべての贈答品を辞退しております。今後はどうかその旨ご理解賜りますようお願い申し上げます。」
手渡しで受け取った後に返送する例文
うっかり受け取ってしまった場合でも、速やかに返送すれば問題ありません。
「このたびはご厚意をいただき誠にありがとうございます。しかしながら弊社規定により贈答品はお受けできかねますため、誠に失礼ながらご返送申し上げます。今後も変わらぬお付き合いをお願いできれば幸いです。」
メール・書面でのフルバージョン例文(冒頭~結びまで)
より正式な文面として使えるフルバージョンの例です。
そのまま社外文書として活用できます。
――――――――――――――――
拝啓 師走の候、貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。
さて、このたびはご丁寧なお心遣いを賜り、厚く御礼申し上げます。
誠に恐縮ではございますが、弊社ではすべての贈答品を辞退する社内方針を定めております。
せっかくのお心遣いをいただきながら、このようなお願いを差し上げますこと、大変心苦しく存じます。
なにとぞご理解賜りますようお願い申し上げます。
末筆ながら、今後ますますのご発展をお祈り申し上げます。
敬具
――――――――――――――――
社内用通知・掲示の例文
取引先からの贈答を断る方針を社員に周知するための文例です。
「取引先様からのお歳暮につきましては、弊社の規定によりすべて辞退しております。受領した場合は総務部まで速やかにご連絡ください。誤解を招かぬよう、全社員が統一した対応をお願いいたします。」
状況 | おすすめの文例 |
---|---|
基本パターン | 「ご厚意を賜りありがとうございます。弊社方針により辞退しております。」 |
毎年届く場合 | 「毎年のご厚情に感謝しつつ、贈答品は辞退させていただきます。」 |
受け取った後の返送 | 「大変失礼ながら、ご返送申し上げます。」 |
正式文書 | フルバージョンの例文(冒頭~結び)を使用 |
社内周知 | 「取引先様からのお歳暮は辞退方針ですので、統一した対応をお願いします。」 |
電話でお歳暮を断るときの言い方
お歳暮を電話でお断りする場合は、対面よりも言葉選びに気を遣う必要があります。
文章と違ってトーンや間合いが伝わりやすいため、短く、丁寧に、そして柔らかい言葉を心がけましょう。
短く丁寧に伝える基本例
電話では長々と説明するとかえって相手の負担になります。
シンプルな流れを意識しましょう。
「このたびはご丁寧なお心遣いをいただき、誠にありがとうございます。恐縮ですが、弊社の方針により贈答品はご辞退しております。お気持ちだけありがたく頂戴いたします。」
相手に配慮した柔らかい言い回し例
表現を少し工夫するだけで、印象がぐっと変わります。
「ありがたいお心遣いをいただきましたが、弊社の規定によりお品物は受け取れないこととなっております。」
「今後とも変わらぬお付き合いをお願いできればと存じます。」
お断りの後に“関係を続けたい気持ち”を添えるのがコツです。
しつこく贈られる場合の断り方
毎年のように贈られるケースでは、やんわり伝えるだけでは伝わらないこともあります。
その場合は「会社の規定」を強調して一貫性を示しましょう。
「弊社はすべての贈答品を辞退することを決めております」と明言するのが効果的です。
ただし、最後には「今後ともよろしくお願いいたします」とフォローを忘れないようにしましょう。
シーン | 言い方の例 |
---|---|
基本パターン | 「恐縮ですが、弊社方針により辞退しております。」 |
柔らかく伝える | 「お気持ちだけありがたく頂戴いたします。」 |
しつこい場合 | 「弊社はすべての贈答品を辞退する規定を設けております。」 |
最新ビジネス事情から見るお歳暮対応の変化
ここでは、2025年現在のお歳暮をめぐるビジネス環境の変化を整理します。
昔ながらの「贈り物文化」とは違い、今は企業間での信頼や透明性がより重視されるようになっています。
ギフト文化から信頼関係重視の時代へ
かつては「お歳暮を贈る=良好な関係の証」とされていました。
しかし近年では、贈答よりも誠実な取引やサービスの質が信頼の指標になっています。
そのため、お歳暮を断っても関係が悪化することはほとんどありません。
年末挨拶やお礼メールで気持ちを伝える方法
お歳暮を辞退しても「感謝をどう伝えるか」は重要です。
年末のメールや年賀状で一言「本年のご厚情に感謝申し上げます」と添えるだけで十分に心は伝わります。
お歳暮を断る=感謝を伝えない、ではないということを意識しましょう。
コンプライアンス研修で学ぶ「断り方」
近年は企業研修の一環として「お歳暮や贈答品の断り方」を学ぶ機会が増えています。
ルールを理解し、全社員が同じ基準で対応できることは、会社全体の信頼につながります。
また、若手社員が戸惑わずに対応できるよう、マニュアル化している企業もあります。
昔の常識 | 今の常識 |
---|---|
お歳暮は贈るのが礼儀 | 贈らずとも誠実な取引で関係は築ける |
断ると関係が悪化する | 断っても感謝を伝えれば問題なし |
担当者ごとの判断 | 会社の方針として統一した対応 |
まとめ:お歳暮を断る会社の正しい姿勢
ここまで、お歳暮を会社としてお断りする理由やマナー、実際に使える例文を紹介してきました。
最後に、押さえておきたいポイントを整理します。
感謝を忘れず規定を守ること
どんな状況でも、まずは相手の厚意に感謝を伝えることが欠かせません。
「いただいたお気持ちはありがたく受け取る」という姿勢を見せるだけで、断り方の印象が大きく変わります。
一貫性のある対応が信頼を守る
部署や担当者ごとに対応が違うと、不公平感や誤解が生まれやすくなります。
会社全体で統一したルールを持ち、誰が対応しても同じ答えになることが信頼を生むのです。
「全社員が同じスタンスで断る」ことは、組織の信用を守るうえで大切です。
スマートに断って長期的な関係を築く
お歳暮を断ることが目的ではなく、その後も良好な関係を続けることがゴールです。
断る際に「今後も変わらぬお付き合いをお願いしたい」と添えるだけで、未来につながる言葉になります。
こうした細やかな配慮が、信頼を長く育てることにつながります。
まとめのポイント | 具体的な行動 |
---|---|
感謝を伝える | 「ありがたいお気持ちを頂戴しました」と言葉にする |
規定を守る | 「会社の方針により」と理由を明確にする |
関係を維持する | 「今後もよろしくお願いいたします」と結ぶ |